スナックかなえ ママの手酌酒

泥酔したら閉店するわよ

言葉と沈黙とコミュニケーションの話

30年以上生きてきて未だに難しいと思うこと、

「何を言うかよりも何を言わないか」

 

沈黙は金、雄弁は銀」とはよくまとめたものである。

この世の中、黙っているということは、言葉を覚え始めた幼児に求めることと同じく難しいのである。

 

元来、私は結構しゃべる方だ。

それが水商売を初めて、しかもおしゃべりの街in大阪。

酒が入るとオチもない話をつらつらとしゃべりたくなるのが本音である。

 

しかし、そこをこらえて、「しゃべらない」を意識して数年。

水商売はしゃべり上手なだけでは煙たがられる。

適度に聞く・話を引き出すことが求められるが、これはどの業界でもそうだろう。

 

 

体感として。

「言わなくてもいいのに」ということをわざわざ発言する人間は

だいたい成金かイキり野郎か である。

 

起業に成功した人、優れたパートナーがいる、

昔ヤンチャをしていて今は…みたいな、

ざっくり何かしらのコンプレックスを持っている。

もしくはそれを克服したという武勇伝がある。

 

 

そう考えれば話は単純で、自分のコンプレックスを隠すために

相手にマウントを取ろうとするのは真っ当なことだ。

(そういうところがダサいことに気が付かないあたり最高にダサい)

 

 

 

ここで改めて、「言わなくていいこと」の定義を明記しておきたい。

 

私の中では、

30秒以内に直せない・検証しようがない

ことを

TPO・上下関係を利用したタイミングで発する

ことを「言わなくていいこと」と認定している。

 

 

 

尚、30秒で直せることというのは、相手が困る・恥をかきそうな指摘とさせていただく。

例えばリュックのファスナーが開いている、歯紅している、ネクタイが曲がっている、など。

さっと直せる、他の誰かが見たときに「うゎあの人…」と後ろ指さされそうなこと。

 

 

言われた瞬間はめちゃくちゃ恥ずかしいだろうが、

そこで直してしまえば恥の時間は短くて済む。

 

「え!?いつからファスナー開いてたんだろ!?誰か言ってよ!」

 

という瞬間は誰にでもあることだろう。

これは積極的にとは言わないが、言っても感謝されることが多いはずだ。

口うるさいと思われてもそれならテメェが鏡の前で10回回ってこいで済む。

 

 

 

 

逆に30秒以内で直せないこと。

 

例えば、「太ったね」

この上なく「放っておいてくれ」である。

実際に太ったか体重がどうとかそういうことは問題ではなく、

「太ってたらどうしろって言うの??あなたに迷惑かけてる??」と返したところで

相手はどんなウィットに富んだアンサーをくれるのか。

 

こういうデリカシーのない言葉を向けられるときというのは、

たいてい対等な関係ではないときが多い。

上司と部下、客と店。

こいつなら言い返してこないだろうという慢心の上の発言であることは明白だ。

 

「そうなんです〜最近ドーナツにハマってて〜w」

「困ってるんですよ〜なんかいいダイエット方法知らない?」

と、一回受け入れてしまうしかない。

これが大変メンタルによくない。

 

ここで「セクハラですよ訴えますね」「先輩は歯が黄色いですね」など

反撃の飛び道具を使わないのは、こちらが幾分大人だからなだけ。

もちろんスパッと言い返しても素晴らしいが、

私は毎回「えっこんなキッショいこと言ってくるの無理キッショ」と

頭が真っ白になってしまうので、何も言わず適当に愛想笑いをしている。

すると分が悪いのか、だいたいのヤツは話題を変えてくる。

面白い返しもできないくせに他人をイジるのは本当にダサい。

 

 

TPOは服装だけでなく、周囲の人を考える能力であると思う。

 

これは意外と身近に結構出没するが、

「一時間待ちとか並ぶ意味わからんーw暇なんかなw」

「(食事をして)これなら俺のほうがうまく作れるわw」

「こんなのにお金かけるとか無駄すぎん?」

 

など。

一切合切、テメェには関係ないのでせめて聞こえないようにしろください。

 

私の元上司がやっぱり成金で、金にものを言わせる生活をしていたが

とある日の飲み会で

「これ俺が作ったほうがうまいしこれをうまいと言うやつの気が知れん」

と元気に宣ったので、これは本当に見事だなぁと関心すらした。

この発言を店員さんが聞いたらどんな風に思うだろう、

今これ美味しい!と言った人の気持ちを考えられないあたりが

スーパーブラック企業だった所以であるのだろうと今ならわかる。

 

 

また、意見と事実のすり替え にも注意してほしい。

 

成金元上司の発言は、意見を事実かのようにしゃべっているから胸糞が悪い。

 

俺が作ったほうがうまい → 意見

うまいって言うやついる?→ 意見

 

何も事実がない。

さも事実かのように意見を語られると、「そうなのかもしれないな」と

一瞬騙されてしまいそうになる。

しかし冷静に考えれば「それってあなたの意見ですよね?」

うるせぇそんな事言うなら食べなくてよろしいこっちに寄越せ。

 

 

 

 

こんなに細かくネチネチと言う方がキッショいのも分かっているが。

大阪という土地柄なのか、生まれが違う私にとって、

ズケズケと発言する関西人はもはや恐怖の対象であった。

 

今でこそそれなりの対応を心得たつもりだが

こちらとしては触れてほしくないことを

「仲がいいからこそ言う」「仲良くなりたいから言う」

と「イジり」のネタにされてしまうと、

それはコミュニケーションではなく「指摘」と感じて大変に苦痛だった。

 

 

髪傷んでるね

歳の割に・・・だね

私だったらそんなことしないけど

 

 

言われた当時はご丁寧に一字一句に落ち込んでいた。

今は「うるせぇほっとけ」で一蹴できるが、

これをコミュニケーションと勘違いされていたらたまったものではない。

 

だからか、歳を重ねるにつれて寡黙な人に魅力を感じるようになってきた。

ポンポンと発言する人も素敵だが、私はそれでは疲れてしまう。

もっと丁寧に言葉と間を選び発言する、これが大人の余裕なのかとも思う。

 

 

とりあえず、この世界から「太った?」という人は絶滅して欲しい。

私が40キロの体重をキープしていることで

毎月100万円を受け取っているなら話は別だが、

そんなことはないのでどうぞ安心して滅びて欲しいと願う。