教えてもらおうか、文学のBLってやつを!
なんてふざけたタイトルと思ったことだろう。私も思った。だが買ってしまった。これは腐女子*1である以上避けて通れない業(カルマ)、文学をBL*2にするなんてけしからん!!!BL警察がけたたましくサイレンを鳴らしながら、夜の街に消えていったのだった…
解釈の可能性
「こころ」「泣いた赤鬼」など日本が誇る文学から昔話まで、多岐に渡る物語のBL、つまりボーイズラブについて解明していく。私自身、国語のテストで『この時の主人公の気持ちを答えなさい』という設問に毎度疑問を感じていた。「何を考えているかだなんて主人公しか知り得ないし、もっと言えば筆者が読み手に対して想像を膨らませる余白を残しているのに点数にするなんてなんて浅ましい」のだろうと。あまりにもひねくれた学生だ。
本著は私の思想に近く、もっと自由な解釈で、ストーリーや時代背景をあわせて登場人物の心意気を考えてみようというかなり前衛的にして斬新、腐女子ながらまことにあっぱれである。(だだしBLに限る)
最初読む限りでは「腐女子が勝手に都合よく解釈しただけの戯言」と感じて少々不快感を感じたが、読み進めればなるほど合点がいく場面が多くあるのだ。これは筆者が実際に大学で文学の研究をされており、論文などで理解を深めた結果、仮定でありながらしっかりとした根拠からきている独自の解釈である。そうでなければ「こころは先生総受け*3メリバ*4」などと太文字では書けまい。
正直私は本作に登場する文学をしっかりと理解できるまで読んだことがない。さらっと冒頭だけとか大まかなストーリーは把握しているがそのくらいで、それでも作者の熱量には圧倒されるばかりだった。これはすごい。また腐女子と言っても闇*5、光*6、人外*7など、派閥によって討論をしているのが尚腐女子でとても良い。いつの時代も腐女子は「ぼくのかんがえたさいきょうのカップリング*8」を振りかざして戦っているのだ。
文学の可能性 広まるンゴねぇ…
夏目漱石や太宰治など有名所はさらりと読んではいるとはいえ、正直理解しがたい部分が多い。「なんで奥さん以外の女と死ぬの?」とか「この友人はどんな存在なの?」と、疑問のスポットライトが人物に当たることが多いのは、本著のように隠された人間関係とその愛慕の成り立ちを読み取れていないからだと感じた。
これは人間に限らず人外でも言えるのだろう。物語に登場する以上、彼らにも相応のこころがあり、まだ輪郭のはっきりしていない恋と思われる感情がある。その熱い視線の先に誰がいるのかを読み解くのは膨大な知識量が必要だろうし、何より作品に対する愛情が欠かせない。
そういった意味では本著は壮大な読書感想文であるとともに、令和の時代に君臨した最高の同人誌なのかもしれない。文学に興味があり同担拒否*9でない限り、一度読んでいただけたらまた別の視点で文学が楽しめるはずだ。
