かなスの巣

後腐れのない日記帳

百と卍 読書感想文(ネタバレなし)

 また一つ どえらいBLに出会ってしまったかもしれない・・・

 なんか表紙が艶めかしくて購入してしまった。嘘です実は結構前から気になっていました。個人的にBL漫画は単発1巻完結であってほしい(スピンオフを除く)ので、もうじき7巻が発売されるとなると…ちょっと…と躊躇していましたが、買いました。


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お江戸はスッゲェ

 時は江戸時代後期、陰間(男色を売る少年男娼)上がりの百樹(もも)と、元火消し・笛吹きで生計を立てる万次(卍)の色恋話。ストーリー的には今の時代もよくある元ヤンチャで太い実家と勘当済の荒くれも美丈夫×身売りさせられていた過去がある純粋天然ワンコって感じ。まぁあるあるですわな。

 ところがちょっと違うのが、江戸時代という徹底した時代背景。言葉使いから羽織の着こなし、粋な手ぬぐいのファッションなんかが随所にちりばめられているので見ごたえがすごい。私も江戸時代の知識は浅いのですが、しっかり脚注がついているので深く考えなくても楽しめます。もちろん基礎知識があればもっと面白いのかも。「喧嘩と火事は江戸の華」の如く、華やかながら慎ましい生活を垣間見ることができておもしろい。

 二人の間に起こるトラブルは基本的に過去にまつわることで、二人とも自分ではどうにもならない人間関係や恋心に心を揺さぶられ、お互いに隠し悟られないようひっそりと愛を育んでいく。その中で少しずつ干渉しあい、親子・兄弟の軋轢がほどけていく瞬間がなんとも美しい。スラっと麗しい美丈夫の涙の尊いことよ。

 なにより全ページがめちゃくちゃ美しい。絵画かよ。春画かもしれない。スケベシーンもなんていうかエロいというより美しすぎて、BL作品ということを忘れるくらいのめりこんで読んでしまう(百も卍もスケベなので結構いたるところで致す)。あとちょいちょい出てくるネコがかわいい。女性たちも麗しく、人間模様にハラハラしっぱなし。

 時代的に男色が珍しいものではないものの、あまり一般的ではなく受け入れ難い人もいるというあたりが妙にリアルで、それがまがたストーリーを焚きつけるエッセンスになっています。ちなみに東海道中膝栗毛に登場する喜多さんも陰間上がりとされています。

全キャラクターがイイ

 千と兆(きざし)がメインになる6巻、泣いたァ…

 千は卍と同じく元火消しの現ヤクザ、兆は船頭。千が愛した人の双子の兄である兆、同じ顔なのに故人と同じはずもなく…という葛藤の末の二人。泣いた。

 兆が健気すぎる。そして揺れ動き始める千の心。荒々しくも切ないのがさぁ…もう泣くしかない…読み終わった後、一時間ぐらい動けなかった…ある意味スピンオフ的な、メインストーリーと外れたところで進むそれぞれの過去が美しい。なんじゃこりゃ…

 千と兆に限らずを組の火消したち、百の旧友、卍の親兄弟すべてにそれぞれの隠された葛藤があり、それらが交差する江戸。勢いと覇気が違う。現代のヤクザモノ漫画では出せない迫力がBL漫画で楽しめていいンですか!?

 

 腐女子あるある、「みんな幸せになってほしい症候群」が無事発動する書籍でした。BLとは言え人間関係の色模様がメインなので結構ツライところは多いけれど、その分読みごたえがあり、伏線と回収が素晴らしい。ちょっとした映画を見ているような気分にすらなる。

 冒頭で『元ヤンチャで太い実家と勘当済の荒くれも美丈夫×身売りさせられていた過去がある純粋天然ワンコ』と紹介しましたが、一つ付け加えると『受のおかげで涙を流しこんな俺についてきてくれることに感謝する攻』×『攻のために怒り人間的に成長する母性爆発スケベ受』にもなります。どうぞご査収くださいませ。