男性の大きな手が好きだ。ないものねだりに近いのかもしれない。
手ってすごくない?
私は生粋の筋肉フェチなので今まで手は盲点だった。末端よりも僧帽筋や二頭筋に目が行ってしまう。これは性(さが)なので致し方ない。
だが、自分自身でネイルをするようになってから他人の手元をよく見るようになった。
女性のネイルはもちろん、男性も結構見る。小指だけ爪が長いとか、少し短い指があるとか。千差万別は当たり前だけど、それぞれの生活が垣間見えるような気がして面白いのだ。
以前会社の労働組合の研修で「21歳の嫁の手」と題された写真を見たことがある。撮影されたのは1963年頃、劣悪な労働環境と畑仕事により老婆のようにひび割れた両手が後ろ手で組まれた一枚である。21歳という花盛りの中、生活のためにぼろぼろになるまで使う手が時代背景を垣間見せる中、ほぼ同い年だった当時は衝撃を受けた。
私の父は自動車整備士だったのでキレイな手を見たことがない。いつもオイルで爪の間は真っ黒、手全体がうっすらと汚れていた。引退してからも趣味の土いじりでシミと相まって薄いレイヤーがかかっているかのようにくすんでいる。幼少期から見慣れていたので何も思わなかったけれど、今思えばすごい働き者の手だ。
つまるところ手はその人の生活を表していると思う。特に仕事においては汚れたり、長時間の作業で固まったり、たこができたりと一朝一夕では身につかない技術をそのまま物語っているようで、姿形はさておき美しい。
手に関するうんちくはさておき、私の手はぷくぷくと丸く、とにかく赤ちゃんのようなムチムチ具合である。以前風邪か何かの時に病院に行って、先生に症状を伝える前に「その手どうしたの!?」と言われたことはまだ根に持っている。通常運転の手です。突き指をしすぎると太くなるとか、関節を鳴らすと太くなるとか諸説あるが、もうそういう問題ではないぐらいぷくぷくしている。福耳ならぬ福手と呼んでほしい。
だからこそないものねだりで手がきれいな人に憧れる。女性のすらりと細い指に輝く細いリング。男性のがっちりした指に手の甲の血管。いずれも手に入れられないから見てしまうのを許していただきたい。
こういう風に新しいところに視点が移るのはいいことだと思う。私自身の身だしなみ・オシャレにその部位が加わっているということだから、アップデートしている証拠だと感じる。そう考えながらそれとなく指のマッサージなんかをする。痩せれば相対的に細くなるんだろうけど、気休めでも触っていた方がいいかなとあがいている。市販のピンキーリングを着けられるは永遠に来ないかもしれないけれど、せめて自分で見てガッカリするような手は卒業したいところだ。
一番好きなハンドクリーム。無香料だし本当にすぐサラッとして紙仕事もできるので毎年買っている。パッケージだけなんとかならんかなぁ。
