
三食の中で朝食が一番好きだ。朝食に食べがちなメニューが好きなのかもしれないけれど、朝起きてまず感じるのがみそ汁の香りだったり、ホテルに宿泊した朝に寝起きでぱやぱやな髪の毛のまま向かうバイキングだったり、文字通り一日の始まりに食べるものは心が躍るのだ。
朝ごはんからはじまる(山本ふみこ著)
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先に申し上げると、これは別に朝ごはんに特化した本ではない。台所仕事を任されているかあちゃんの忘備録のような、季節と毎日の食卓に関わるエッセイである。
なぁんだと思ったのもつかの間、厨仕事(著者は台所仕事のことをこう表す)の奥深さがじんわりとにじみ出る、読めば読む程台所に立ちたくなる不思議な一冊だ。
この一冊を読み終わった後、一番に思ったのは「これうちの母に読んでほしいな」だった。私の母も長年厨仕事を任されており、時折著者の言葉と母の背中が被って見える瞬間があった。きっと母なら、私以上に共感できることも、それはちょっとと思うことも多くあるだろう。その意見を聞いてみたいと思った。
旦那のためから子供のため、ひいてはまた旦那と二人のため、料理を作る相手は変われど、食を任されている料理人の心持は一人暮らしの私とは全く異なる。
食べさせる相手のこと、四季のこと、近隣とのお付き合いのこと、好きなこと、それぞれを無理のない範囲で日々淡々とこなす。これがどれだけ難しく、充実されられるのか、はたまた飯炊き婆として報われないことに涙するのか、なかなか想像に難しいところだ。
だがこの一冊に悲壮感はない。毎日文句を言いながらも美味しい料理をこさえてくれた、母に通ずる優しさが根底にある。よその家の「食を作る人」の目線を楽しめる、これは料理をする人もしない人も、一度食について考えるいいきっかけになる一冊だと思う。